日々の暮らしを愉しむ

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【cafemignon】

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「主人も亡くなってしまったことだし、
 私ももう一度おみせをやろうか、それとも
 自宅とアパートを全部直してしまおうかと
 考えているの。」
「・・・ということは次の契約は更新できない、と
 言うことですね?」
「・・・」

やっぱり、予感は的中した。

そしてしばらく迷った、それもかなり真剣に。
この場所を離れる・・・ということは
また別の物件を探さなくてはならない。

でもすぐに見つかるなんて都合のいい話は、ない。

お向かいの教会の司祭の先生は
「立ち向かう勇気が必要な時もあるけど
 諦める勇気が必要なときもあるよ。」
とおっしゃった。

そうだよね・・・

以前からcafeを始めたくてcafemignonを手伝ってくれてた
ジュンちゃんが彼女の地元に物件を見つけたと
告白してくれた。

そこでおみせで使っていた厨房機器や食器を
彼女に譲った。

すぐに物件が見つからないことは
私自身がいちばんよくわかっていたから。

大家さんが生前
「なんかあってここを閉めなきゃならないときが来たら
 いらないものは全部置いてっていいよ。
 オレだって居抜きで場所を提供したんだから
 おあいこだろ?」
とおっしゃってたが

奥さんにはそれは通じなかった・・・

cafemignnを閉めることはいろんなお客さまに
お伝えして「えー!なんで閉めちゃうの???」
という質問には一切答えなかった。

ご近所の毎日来てくれてた
ミズカワさんっておじいちゃんだけは
「やぁーっとアンタも結婚する気になったんだな!
 いやぁ、アンタとシノちゃん(近所のシンガーソングライター
 の友達)はいつ結婚するんだか、
 こっちはヤキモキしてたんだよ!
 やっぱり女は家庭を守るのがイチバンさね!」
と晴々とした笑顔で言っていた。

「いや、結婚するなんて一言も言ってないじゃん(笑)」

「えぇー?なんだってぇ?」
・・・ミズカワさんは都合が悪くなると
急に耳が遠くなる特技を持つ
”じじぃ”のひとりなのをこの時、すっかり忘れていた・・・
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by mignon0701 | 2010-05-31 16:31

【cafemignon】

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あの”ムトウさん”よりも闘病期間は
大家さんの方がずっと長く、
長い分、ちょっと皮肉屋さんになってはいたが
毎日、まいにちcafemignonには顔を出してくれていた。

でも自分の気分がすぐれなかったり、
具合が悪くてイライラしたりしていた時は
「オレがあの店をあそこまでにしてやった!」
などと言いまわったり、
アルことナイことを言いふらして
運営しているこっちが困惑してしまうときもあった。

でも、彼の体調を考えると
「病気にさえなっていなければ・・・」
というキモチが強かったんだと、思う。

”健康”って
その存在自体、あまりにも当たり前すぎて
私たちはふだん、なんとも感じないが

なくしてみて初めて、その存在のスゴさに
気付かされるやっかいなモノだから・・・

ある日、突然入院したかと思っていたら
ほんの何日かで
大家さんは”無言の帰宅”をした。

看護婦さんにも気付かれずに
ひっそりと逝ってしまったそうだ・・・

「みよさん、これからどうなっちゃうのかな、ここ・・・」
cafe開業希望でずっとバイトをしてくれてた
ジュンちゃんが言った。

「うーーーん、どうなるかなぁ・・・」

こういうときの”ヤな予感”はびっくりするほど的中する。
お葬式から何日か過ぎたあと、
大家さんの奥さまが
cafemignonを訪れた。
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by mignon0701 | 2010-05-27 17:28

【cafemignon】

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”その日”は予想外にもサクッとやってきた。
そう、cafemignonが終わってしまう日。

きっかけはcafemignonの物件を所有している
大家さんが亡くなったこと。

この物件は以前、大家さんが30年近く
喫茶店としてやっていた。
でも、彼が癌になってしまって仕事が困難になってしまい
やむなく”テナント募集”のポスターを貼った。

その3年後、
私がお散歩でたまたまこのおみせの前を通ったことが
全ての始まりだったわけだ。

当時の残っていたレジのレシートロールを見て
ひっくり返りそうになった。

一か月の売り上げが1万円いっているか、いないか・・・

「うーん、どうなんだろう???」
と一抹の不安がよぎったこともあったが(笑)

でも時が経てば
そんな不安は思う暇がなくなっていた。

cafemignonを開店して4年の月日が経っていた。
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by mignon0701 | 2010-05-25 17:51

【cafemignon】

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ある夏の日、
常連さんのシオタさんが
「そうだ!みんなで花火見にいきませんか?」
と提案してくれたのに対し、
アーティストのヨシダさんが
「えー!いいけどさぁ・・・人ごみのなかで見るのって
 めんどくさくなぁい!」と・・・

「じゃ、大学の近くの病院のレストランなら食事しながら
 見れるかも知れませんよ!私、調べます!」
とコバヤカワさんからの提案にみんな大賛成♪

運よくオトナ8人もの予約が花火大会のある日にとれた!

そのレストランは洋食の老舗で、病院の8階。
見晴らしも抜群!!!

「いやー!コバヤカワさんっ!こんな穴場見つけるなんて
 すごいっ!」
とみんな大喜びで少しずつ運ばれてくるコース料理にも
子供のようにウキウキしてた。

「あれ?でもなんか???」
・・・そう、防音がバッチリきいているので
”ドーン!”とかいう音が聞こえない・・・

「まぁ、でも人ごみもありませんから(笑)」
と話していたら
ぞくぞくと患者さんとそのご家族が相次いで来店。

しかも点滴をぶら下げている患者さんが大半で
その点滴で花火が見えにくく・・・(涙)

「すみません、見えづらいですよね・・・」
と気を使ってしまう人まで出てきてしまったが

「全然、そんなコトないですよー^^」
とちょっぴりフクザツな気分で花火観賞はすすんだ。

「でも、まぁ車いすでここまで来れる患者さんって
 もうすぐ退院できるんだろうし・・・ね^^」
と和やかに食事と花火大会は終焉を迎えた。

「まぁ、いい思い出になったじゃん♪」
と夜風を頬にそれぞれ心地よく感じながら

「それじゃぁ、気を取り直してカラオケ行きましょう!」
と夜は更けていくのだった・・・

このお付き合いは今現在でも続いている・・・
一応、お客さまなんですよ、みんな・・・(笑)
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by mignon0701 | 2010-05-24 17:49

【cafemignon】

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ここのところ過去のおはなしばかり書いているので、現在のことを少し。

当時とは場所を移って
私はいまもおみせやさんをしている。

同じ区内ではあるけど
場所が変わって、あれから時も経って
モノの見方や考え方も
少しずつではあるけども変化している。

当時は”cafe色”が強かったけど
いまのおみせやさんは
地元のお客さまが”パンやさん”に育ててくださった。

まいにち、毎日
パン生地たちと向かい合っている日々を送っている。

そしてそれを提供する形も
少しずつ変化している。

それは誰かにレシピを通じて伝えていくお教室だったり、
”媒体”というものを通してだったり、
イベントというかたちだったり。

でも、相変わらず個性的で魅力のある
お客さまが日々来て下さっているのは
いうまでも、ない(笑)

もちろん、区内とはいえ
かなり場所的には遠くなったが
cafemignonのころの常連さんも
もちろん来て下さっている。

お互い年はとって(笑)
経験も積んだが、本質は変わらない。

だから親戚の集まりのような感覚になる(笑)

これからもいろんなカタチで
私自身も、そしておみせの内容も、形態も
変化していくだろう。

それを受け入れながら
この”おみせやさん”という職業は
ずっと続けていくつもりだ。
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by mignon0701 | 2010-05-20 02:20

【cafemignon】

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自分で言うのもなんだが、
今思い出してもcafemignonは”変わったおみせ”だった。

常連さんたちがいるのは、どこのおみせでも同じ。
でも、その常連さんたち同士が仲良くなってしまうのだ。

そしてそうなってしまうと
”いちげんさん”が入れない独特の空気が生まれがちになる。

しかし、彼らは違っていた・・・
しぜーんと初めてあの水色のドアを開けて
入って来て下さる方でも
なんだか不思議と前からの友達のようになってしまう。

ただ、疲れていたり、
なんだかムスっとしたひとは、当然のことながら
放っておいてくれる。

どっちがお客さまなんだろ???
と感じることも、実はよくあった。

ある暑い夏の日。
クーラーはガンガンにかけて
しかもこんな日に限って満席!

25席、ぎゅうぎゅう!

なのに・・・なのに・・・
みなさんにランチやらデザートやらを出し終わって
「ホっ♪」とした瞬間、

バチン!と全ての電気が落ちてしまった!!!

配電盤を見てくれた工学部の学生さんが
「あー、これ、漏電しちゃってますよ。
 電気屋さん呼ばないと直んないですよ・・・」

へ?こんなときに???

ボー然とした私に常連さんたちは
ドアを開けて風通りをよくしてくれたり
どこからか自分の持っていたお扇子やシタジキ(!)
書類のカバーなど仰ぐものを持ち合わせていない人たちに廻り

「みんな出し終わったあとでよかったじゃぁないですか^^」
とみんなで笑いあった。

でも”なぁなぁ”には決してならない。

そんな”オトナ”な人たちに
私はいつも支えられて立っていたのだった。
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by mignon0701 | 2010-05-17 15:13

【cafemignon】

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それから約2か月。
できるだけ毎日お見舞いに行く日々だった。

「1泊だけなら・・・」と外出許可が出たと知らせを聞き
「晩ごはんは中華を食べよう!
 ワタベに予約を入れさせておいたからな!」
と聞き、楽しみに待っていたら
午後になってムトウさんの若い頃から
”舎弟”として近くにいたワタベさんから連絡があって

「病院を出て信号を渡ったくらいで
 ムトウさん、歩けなくなって座り込んでしまったので
 急きょ、病院に戻されました。
 先生の判断でやはり今日の外出は許可できない
 とのことです。」と・・・

それから何日か後の土曜日の朝
ワタベさんからまた連絡があった。
その日は朝から暑くて、いつもより早くおみせに私は、いた。

「みよさん・・・
 昨晩、ムトウさんが亡くなりました。」

亡くなった???

そのコトバが今でも理解できずにいる。
お葬式もひっそりといつの間にか済まされ
周りの人たちもお墓の場所すら頑なに教えずに・・・

ただ、亡くなる直前に
偶然、何年も会っていなかった娘さんが
彼女の子供が急にお手洗いに行きたいと
車の中で言いだして
「近くだから。」と
通りがかった病院の1階でお手洗いを借りたらしい。

その病院とは
ムトウさんの入院しているところで
しかもその真上の5階が彼の病棟だった・・・

約10ヵ月間。
それは、なんだか夢を見ているような心地だった。
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by mignon0701 | 2010-05-15 07:26

【cafemignon】

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「・・・しかしさぁ、いればなんだかイヤだなぁ、なんて
 思ったりもしたけど、いなければいないで
 なんだか寂しい気もするよね。」
とコバヤカワさんがボソッとつぶやいた。

同じ場所にいたみんなも
おなじようなことを口にしていた。

なんだか、家族の一部がいなくなった・・・そんなキモチ。

何日かして「これ、キムさんに渡しといて^^」と
ムトウさんから近所の老舗の和菓子屋さんの
カステラを預かった。

「ん???これ?」

そう思いながらも仲よしのキムさんにその箱を渡した。
「わー!あの高級和菓子店の箱じゃないですか!」と
キムさんは開口いちばんに言ったが
私と同じく「ん???」と言った。

そう、カステラの箱にしては”重い”のだ。

みんなで「なになに???」
とキムさんの手元を覗いてみれば、大笑いっ!!!

なんと箱の中身は
病院の食事で出る、いかにもムトウさんが食べなさそうな
銀色の包み紙につつまれたマーガリンや
苺ジャム、それにムトウさんの嫌がって飲まなかった
アミノさんの薬などが入っていた。

そしてちいさな紙には”アタリ!”の文字・・・

「なぁーんか渡すとき”ウフ^^”って言ってたんだよねぇ(汗)」
「いやぁ、こんなタイヘンな状況でもユーモアを
 忘れない彼は非常に魅力的ですよ!」

みんなの笑い声がおみせに戻った瞬間だった。
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by mignon0701 | 2010-05-13 01:26

【cafemignon】

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ある日、ムトウさんと晩ごはんを食べにでかけたとき、
ムトウさんの小指には
それまでみたことない指輪がはめてあった。

シルバーの台できれいなターコイズの石の入ったもの。

「わー!きれいな水色だね。」
と思わず言ってしまったら
「だろぉ!こりゃみよちゃんに似合うと思ってな。」
と右手の中指にはめてくれた。

「今は仕事で精いっぱいなんだろうけど
 こういう余裕も必要だよ^^」と。

次の日から「なんか検査いろいろするらしいんだよ。」
と急に入院が決まった。

イヤな胸騒ぎが、した。
梅雨が明けて本来ならキラキラ見える太陽が
なんだか私には淀んで見えた。

「でさ、これはこまごました物の買い物頼む時のお金。
 なくなったら教えて。で、あとアタシの通帳とお部屋の鍵。
 他の奴に頼んだらスグなくなっちゃいそうだから、さ。」
と貴重品を預かってしまい

仕事が終わったら毎日
お見舞いがてら近くの病院に通うことになった。

本来なら個室に入ることだって
ムトウさんなら可能なのに
彼は最後まで自分の素姓を隠し通した。

「ま、そのうち出られるんだろうから
 大部屋の方がにぎやかしくていいじゃねぇか^^」
と笑いながら看護婦さんたちを笑わせたりして
病院に溶け込んでいった。
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by mignon0701 | 2010-05-12 10:05

【cafemignon】

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ムトウさんとは本当にいろんなところに
よく食事に出かけた。

仕事が終わる時間になると
「おーう!行くぞっ!」と
まるで”彼氏”のようににんまりしながら
おみせの外で待っている。

自分の人生のタイムリミットがきているのを
本能的にわかっていたのだろう、
それまで自分が大好きだったおみせ1件ずつ
”つぶして”いくように出かけることが多かった。

そして新しい場所でのおみせ巡りも。
mignonのお客さまから
「あそこ、美味しいよ!」と聞けば行ってみる。

そして歩いて10分かからない場所でも
タクシーで行った。
今から思えば歩くことがキツかったのかもしれない。

あるとき、おみせの近くの美味しいと聞いた
お寿司やさんに行った。

スッと馴染むようにカウンターに座り
「大将が最初にアタシに食べてほしいネタを
 ひとつちょうだいな。」と注文。

「へい。」と出されたネタを一貫食べると
「さ、みよちゃん、行こうか。」と席を立った。

「どうした?具合悪い?」と聞くと
「いや。おいしくないモノを食べたって
 そりゃお金の無駄遣いさ。
 それなら食べない方が、いい。
 さ、気を取り直して次行くぞー!」

「お金ってのはね、金額がどうこうじゃなくって
 生きた使い方をしなきゃダメだ。
 自分が気持ちよく支払えるものに使わないと
 そりゃお金に対しても失礼だって
 アタシは思うんだよ。」

毎回、毎回外食するたびにいろんなことを学んだ。
給仕する人の身のこなし方や
出すタイミング。
心地よくそこにいる人たちが過ごせる空間や
間の取り方。

昔から”老舗”と呼ばれるところには
見慣れてくると、
「やっぱり何年、何十年って続いてるところには
 必ず理由があるんだ。」
っていうのを目でも、舌でも学ばせてもらった。

でも、そんな大切な時間は
少しずつ、でも確実になくなっていった。
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by mignon0701 | 2010-05-11 01:18